書籍紹介 「がんで男は女の2倍死ぬ」 田中-貴邑 冨久子 著

がんで男は女の2倍死ぬ
田中-貴邑 冨久子 著 ISBN978-4-02-273241-5

一般の人々だけでなく医師でさえも、病気や死因に性差があることは、あまり認識していないのが現状です。しかし、がんや脳血管疾患、心疾患のような男女ともにかかる病気でも、男と女では罹患率や死亡率や症状が大きく違うことがあります。

性差医学、性差医療とは、そうした男女の違いを明らかにし、原因を探り、病気の予防と治療に役立てることを目的として成立した医学領域です。

かつて医学の研究は、もっぱら男性を対象に行われてきました。男性の患者のデータがさしたる疑問もなく女性の患者にもあてはめられてきたのです。性差医学、性差医療の先進国である米国では、本格的な取り組みが20世紀末からスタートしましたが、日本では、米国のように国を挙げて研究推進するところまでいっていません。

本書の第1の目的は、医師や専門家ですら、性差医学への理解が進んでいるといえないからこそ、一般の人びとが性差医学、性差医療について知ることは自分の健康を守るのに有益で大切であること。第2の目的は、なぜ、病気にそのような性差が発現するのかを説明すること。それは男女のからだのしくみの違いを知るだけでは不十分で、生物学的性(セックス)と社会的・文化的性(ジェンダー)という、2つの性差を理解することが不可欠です。さらに第3の目的は「男は仕事、女は家庭」という社会的・文化的性に基づく性別役割が、実際に男女の病気や寿命にどのような影響を及ぼしているかを知ってもらうことです。

3大死因が生活習慣病であるということは、すなわち、男性が生活やライフスタイルを変えさえすれば患者や死亡率の大幅減が期待できるというわけです。それを最も手っ取り早く効果的に実現する方法は、社会も家庭も、男女がともに参加してつくることだと著者は主張します。

なぜ、日本の男女の寿命はこんなにも差がついたのか?男女そろって健康で長生きするにはどうすればいいか?答えは本書の中にあります。

2012年12月13日 9:55  カテゴリー:書籍紹介

書籍紹介 「ガンを超える生き方」 土橋重隆 著

ガンを超える生き方
土橋重隆 著 ISBN978-4-19-862348-7

ガン診療で何が捨象されたかを考えれば、今のガン治療の実態が理解されます。“診断する”とは今の段階で体(臓器)の変化に名前をつけることです。この名前は個人的なものではなく、ある基準によって決まります。つまり、患者さんが違っても診断基準が同じであれば同じ診断名がつきます。すでに、この時点で個人的な生活史が捨象されています。ガンになる原因は1つだけとは思いませんが、カルテには原因についての記載は一切なく治療は診断がつくことからスタートします。

ガン治療ではなぜガンになったのかということは必要とせず、いかにガン細胞を消失させるかが目的となります。ガン細胞を消失させる手術、抗ガン剤、放射線という行為においても治療効果の個人的な差が捨象されることがあります。科学的なデータ(抽象の産物)を基に治療が行われますが、そのときには、個人の体質、免疫力、精神力などは捨象されています。早期ガンであれば科学的(西洋医学的)治療でも対処できますが、進行ガンとなると話が違ってきます。原因となるものを捨象した診断で個人差を捨象した治療を行ったとしても治療成績に、ばらつきが出て治せると言い切れる治療法ではありません。

著者は西洋医学的治療を否定しているのではなく、抽象の産物であるがゆえに科学的診断治療には限界があることをわかって欲しいと主張します。実はガンの本質は捨象化された生活史の中にありますが、抽象化された学問を学んできた医者にはわからず、治せないのは医者の責任ではありません。著者は患者さんが診断治療に際して捨象された自分の歴史を振り返り、生き方の変更を決断すれば治療効果は自ずと満足できるものになると考えています。従って、ガンを含めて病気になる理由は、患者さん個々の中にあり治療法に頼っていては病気は治らないと強く訴えます。

“ガンはあなたの人生に届いたメッセージ”

2012年12月6日 15:36  カテゴリー:書籍紹介

書籍紹介 「暴走老人!」 藤原智美 著

暴走老人!
藤原智美 著 ISBN 978-4-16-369370-5

いま若者の凶悪犯罪の現象とは反対に「いい歳をした」危ない大人が増えている。2005年、刑法犯で検挙された者のうち、65歳以上の高齢者は数にして46,980人。平成元年にあたる1989年は9,642人だからわずか16年で約5倍の増加というとてつもない数字になる。この間の高齢者人口の増加が約2倍だから、5倍というのはそれをはるかに超えた数字である。分別があってしかるべきとされる老人が、ときに不可解な行動で周囲と摩擦を起こす。あるいは暴力的な行動に走る。こうした高齢者を著者は「新老人」と呼ぶ。新老人が暴走する原因を一言で言えば、彼らが社会の情報化へスムーズに適応できないことにある。いつの時代も社会は変化し、それにともなって人々の暮らしも変わっていった。けれど、この半世紀の変わり様は、そのスピードと質によって他の時代とは明らかに異なる。激変する時代環境では過去の経験則はムダであるばかりか社会適応の妨げになる。新しいビルを建てるには古い建築物が邪魔になるのと同じ理屈である。

著者は「時間」「空間」「感情」の秩序変化への不適応として新老人の暴走原因を分析する。「時間」については、例えばインターネットを情報のスタンダードとする時代、それまでの時間に対する感覚、使い方を大きく変えようとしている。人生時間のリミットが見えてきた世代にとって、その対応は切実でありつつ、大きな困難をともなう。「空間」については、住まいでは個室化が進み、人々は目に見えない個のバリアを張り巡らしていて、それは公共空間においても同じで、声、音、臭いという領域でもテリトリー感覚は強力になっている。「感情」については、サービス化する社会で、人々のあいだで感情をマネージメントしようとする意識が強くなり、その上で新しい内面の秩序化が日常的に起こっている。こうした「時間」「空間」「感情」というレベルでの急速な変化に適応していくのは、若い世代でも努力必要とする。ましてや新老人たちは、さらにひどく困難な営みとなる。

本書のテーマは「暴走する老人たち」ですが、著者は老人批判を展開しているのではなく、暴走の現実を追いかけて、現在進行している人と人のかかわり方の根底的な変化を捉えています。

2012年11月29日 9:28  カテゴリー:書籍紹介

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