書籍紹介「血液型でわかる病気とケガのリスク」深瀬浩一 著
「血液型でわかる病気とケガのリスク」
深瀬浩一 著 ISBN978-4-299-06636-7
本書は、ABO式血液型が感染症、心血管疾患の起こりやすさやケガの重症化リスクと"どの程度"関係しているかについて、最新の疫学データと生物学的な機序にもとづいて説明することを目的としています。とはいえ、「血液型だけで病気が決まる」と煽るものではありません。血液型は"運命"ではなく、"確率の微調整"として重要な手がかりを与えてくれます。
1.ABO式血液型(A型・B型・O型・AB型)と糖鎖
(1)赤血球表面の糖鎖によって血液型が決まります(体細胞の約70%が赤血球)。
(2)O型糖鎖(グルコース、ガラクトース、Nーアセチルグルコサミン)にNーアセチルガラクトサミンが結合するとA型。
(3)O型糖鎖にガラクトースが結合するとB型、両方の糖鎖が結合するとAB型になります。
(4)糖鎖は赤血球のみならず、全身の上皮細胞とくに胃や腸などの消化管に多く存在しています。
(5)自分がもつ抗原と結合する抗体はもっていない一方で、自分がもっていない抗原に結合する抗体はもっています。
(6)従って、A抗原のA型は抗B抗体を、B抗原のB型は抗A抗体を、A抗原及びB抗原のAB型は抗体はなく、H物質のO型は抗A抗体及び抗B抗体をもっています。
2.血液型と感染症
(1)新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は「A抗原」が好きなので、A抗原をもつA型(またはAB型)は感染しやすく、H物質のO型は感染しにくい。
(2)新型コロナ感染で、免疫の暴走による「サイトカインストーム」が起こると血栓が発生し重症化しますが、以下の理由でO型は重症化しにくい。
(3)血栓には動脈硬化のように動脈にできやすい血小板血栓(白色血栓)とVWFや第Ⅷ因子といった血液凝固因子が関与し、足の付け根の静脈などに発生しやすいフィブリン血栓(赤色血栓)があります。
(4)O型の人はVWFと第Ⅷ因子濃度が低いため、非O型より血栓ができにくい。
(5)さらに、O型の人はVWFの分解速度が非O型よりも早く血栓が解消されます。
(6)以上より、O型の人は心血管疾患や脳血管疾患のリスクが低くなります。
(7)一方で、O型の人は重大な外傷などの緊急時において止血が困難になるという弱点があります。
(8)O型の人はコレラ菌に感染しやすく、その理由としては、コレラ菌の表面にあるO抗原とO型の赤血球にあるH物質が同質であると考えられています(AB型は低リスク)。
(9)O型の人はピロリ菌にも感染しやすく、長く体内にとどまります。その理由としては、ピロリ菌が好むH物質がO型の人の体内に豊富にあると考えられます。
3.血液型と慢性炎症
(1)慢性炎症は急性炎症に比して、発症期間が長いだけでなく、自覚症状はなく、特定の細菌やウイルスの感染によって生じるわけではありません(免疫システムが過度に活性化)。
(2)慢性炎症の第一の原因とされるのは「内臓脂肪型の肥満」で炎症性サイトカインが放出され、白血球が活性化します。
(3)さらに恐ろしいのは、炎症性サイトカインの働きで脂肪細胞から血液中に脂肪酸が放出(遊離脂肪酸)され、それが血流に乗って、ほかの臓器や組織にも慢性炎症を及ぼします。
(4)炎症マーカー(CRP、ILー6、TNFーα)はA型の人では高い値が出やすく、O型の人では比較的低い値になるようです。
血液型の最新知見で解き明かす!!
2026年9月17日 9:05 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「読書する脳」毛利拡 著
「読書する脳」
毛利拡 著 ISBN978-4-8156-3336-3
本書は最新の脳科学の知見をもとに、読書がいかにして私たちの集中力を高め、記憶力を向上させ、疲れた脳を回復させるか。共感力を高め、創造性を育むのか。その驚くべきメニズムを専門家の視点から分かりやすく伝えています。
1.読書の今をひもとく(デジタル媒体と紙媒体)
デジタル媒体による文字は、強い認知負荷を生じさせ、脳が過活動状態となり読解力が低下します。一方、紙媒体が持つ触覚的な特性や、空間的把握が可能で、深い理解や記憶定着において重要な役割を果たします。デシタル社会の便利さと引き換えに、私たちは「じっくり考える力」や「深く読み解く力」を失いかけているかもしれません。
2.読書がもたらす脳科学的メリット
読書は副交感神経を優位にし、ストレスの軽減(コルチゾールの分泌低下)や心身のリラックスを促します。さらに読書に集中すると脳のアイドリング機能のようなデフォルトモードネットワーク(DMN)の過活動が抑制され、反芻思考による精神的疲労を防ぐこともできます。一方、フィクションを読んでいる際にはDMNが適度に活性化され、共感力や想像力の向上に寄与します。さらに、脳のダメージを補う「認知予備力」を育み、認知症のリスクを遠ざける可能性も秘めています。
3.文字と言語処理の脳メカニズム
漢字(表意文字)は視覚を介して、直接的に意味を理解する脳内プロセスを促し、一方で仮名(表音文字)は意声を介して意味を理解するプロセスを促します。この両者が同時に使用される日本語を読むことで、脳は自然と多様な領域を柔軟かつ複雑に使い分け効率的な認知能力を育んでいます。
4.認知バイアスとセルフトークー自分を操る脳のしかけ
脳は情報を無意識的に選別し、自分にとって都合のよい現実を作り上げる「認知バイアス」のしくみがあります。さらに、「きっと分かる」「面白そうだ」といったポジティブな「セルフトーク」は報酬系を活性化し、自己効力感を高める一方で、「どうせ無理だ」「難しすぎる」といったネガティブな「セルフトーク」は扁桃体を刺激し、ストレス反応を強化します。これらの脳の働きは読書体験や精神状態に大きな影響を与えます。しかし、自分の思考や感情をうまく調整することで、読書の効果や精神の安定を大幅に向上させることができるのです。
5.脳が喜ぶ読書術
「快読」(飛ばし読み)「精読」「音読」という三つの読書法は、目的や状況に応じて適切に使い分けることが重要です。脳は、効率的な情報抽出に適した「快読」では前頭前野を中心に広く浅く処理を行い、一方で「精読」では言語野や前頭前野が緊密に連携し、深く情報を分析・精緻化します。また、「音読」では視覚・聴覚・運動感覚を同時に活性化し、記憶の定着を促します。さらに、読書感想文や読書カードなどのアウトプットは、情報の長期定着を促す脳メカニズム(想起練習、再符合化、再固定化)を活性化させます。
6.読書がもたらす共感力と社会性
読書は私たちの共感力や社会性を養います。特にミラーニューロンの働きを通じて他者の感情や行動を追体験する「代理体験」が重要で、読書が情動的共感や心の理論を高め、社会的協力や適応能力を促します。また、読書に伴う「未完了感」や「内的省察」は主体的な思考や自己理解を深める重要な機会です。さらに、多様な視点や知識に触れることで脳の連合皮質(知識の組み合わせ)が活性化し、不確実で複雑な現代社会を生き抜くための創造性やレジリエンスを向上させることができます。
読者は脳と心を鍛え、より豊かな人生を送るための強力なツール!!
2026年9月3日 9:03 カテゴリー:書籍紹介
