書籍紹介「老化負債」伊藤裕 著
「老化負債」
伊藤裕 著 ISBN978-4-02-295297-4
老化はからだに溜まる負債(=借金)。だから、返済さえすれば若くなる。44歳と60歳が大きな節目です。「お酒に弱くなった」「夜中に目が覚める」「便秘がち」「文字を読み違える」「汗をかきづらくなった」「すぐ腹が立つ」……これらは臓器からの老いのサイン。しかし、気をつけて努力すれば返済することができる。
I「臓器若返り」の三種の神器
遺伝子の傷跡、エピゲノムの変化を暦年齢とは別に「エピゲノム年齢」あるいは「遺伝子の年齢」と言います。それを逆戻しするエビデンスに基づいた臓器を若返らせる3つのアプローチ(心身のストレスをうまくコントロールする)。
1.食
(1)カロリー制限。普段食べている量の7~8割にするとサルに至るまで寿命が延びるだけでなく、糖尿病、心血管病、認知症にもなりにくい。つまり健康多命が延びる。
(2)カロリー制限による健康寿命のキーマンは、長寿遺伝子の一つと考えられる
サーチュイン酵素。この酵素は脱アセチル化酵素でエピゲノム変化をもたらします。
(3)サーチュインを活性化する補酵素としてNADが知られており、そのもとなる物質NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は抗老化物質として人々の熱い視線を浴びています。
(4)サーチュイン以外にも、よいエピゲノム変化を起こすと期待される食物としてスルフォラファン、クルクミン、カテキン、酪酸、キウイフルーツ、地中海食、和食などがあります。
2.運動
きつめの筋肉トレーニングをすることで、筋肉を肥大させる遺伝子のエピゲノム変化が起こります。そしてその後トレーニングを休止してもその効果が残り、トレーニングを再開した時に、前回より大きな効果が得られます(記憶効果)。
3.マインドフルネス
評価や判断を一切手放し、過去や未来のことを切り離して今の瞬間にだけ注意を払おうとする瞑想法(エピゲノム変化により、炎症を促す遺伝子の発現が減少)。
Ⅱ老化負債の返済を助けるホルモン三銃士
遺伝子のエピゲノム変化を抑制し、ミトコンドリアを元気にする老化負債返済の心強い味方になってくれるホルモン三銃士
1.「食」とグレリン
(1)グレリンはお腹が減ると分泌されて、しっかり食べて丈夫な体を作り、そして生きるためのエネルギーをたくさん作り出すことを促します。
(2)老化負債返済のためには、空腹の時間を少なくとも12時間、できれば14時間確保することが勧められます。
2.「運動」とナトリウム利尿ペプチド
(1)ナトリウム利尿ペプチドは、心臓から分泌されるホルモンで、血管を広げ、腎臓に働いて、余分な水分や塩分を排泄することで血圧を下げます。
(2)ナトリウム利尿ペプチドは、適度な運動で分泌が増えます。ウォーキングなどの運動は1日20~30分ほど、隣の人と話しができるぐらいのきつさで毎日続ける。一度にまとめて歩く必要はなく、分割して運動しても大丈夫です。
3.「ふれあい」とオキシトシン
(1)オキシトシンは脳の中の視床下部の「室傍核」で作られ「愛情ホルモン」として注目を浴びています。
(2)オキシトシンは男性にもあり、女性は妊娠分娩以外の時にも、生涯にわたって分泌され血液に溶けて全身を回り、脳にも作用します。
(3)オキシトシンは、2人の"つながり"のためのホルモンですが、ペットとのふれあいでもその分泌は高まります。うつ病や自閉スペクトラム症に対してアニマルセラピーが実施されています。
からだにたまる「長年のツケ」の正体。
抗加齢医学のエキスパートによる画期的若返り法!
2025年11月20日 9:05 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「睡眠の起源」金谷啓之 著
「睡眠の起源」
金谷啓之 著 ISBN978-4-06-537796-3
「脳をもたないヒドラも眠る」、そして、「ヒドラの眠りのメカニズムはショウジョウバエや哺乳類など他の動物と共通している」という著者による発見は、この世の"新しい真実"となり大きな反響を呼んだ。
1.ヒドラの睡眠についての研究論文の主旨(2020年10月科学誌に掲載)
ヒドラの行動を、「行動の静止と可逆性・反応性の低下、眠りのホメオスタシス」といった睡眠の一般的な指標に照らし合わせて解析し、睡眠状態かあることを発見。遺伝子レベルで睡眠のメカニズムに迫ろうと、断眠させたヒドラの遺伝子発現を解析して212個の遺伝子を特定し、それらの相同遺伝子をショウジョウバエでノックダウンすると、ショウショウバエの睡眠の長さが変化することを実証した。さらに、哺乳類をはじめとして、他の動物で睡眠を調節する作用がある物質を培養液に添加するとヒドラの睡眠も影響を受けることが分かった。また、長い時間(1日半)にわたってヒドラを断眠させると、細胞の増殖率が低下した。ヒドラが眠る理由の1つは体の維持や成長のためではないかー。
2.眠りの起源は何か
(1)新生児の睡眠
生まれたばかりの新生児は睡眠時間はとても長く16時間以上にも及び、眠りのうちに占めるレム睡眠は50%近くにも及ぶ(大人は20%)。そして、成長するにつれてレム睡眠の占める割合は減り、総睡眠時間もしだいに減っていき、8時間程度に収束する。生まれたばかりの赤ん坊が、レム睡眠を多くとる意味は未だ解明されていません。
(2)覚醒とは何か、意識とは何か
私たちは、いつから眠るようになったのか、それとも、もともと眠っていて、「覚醒」を獲得したのか。そこにもう1つの「眠りの起源」があり、それは「覚醒とは何か、意識とは何か」という新しい謎に行き着く。
3.眠りと意識
(1)意識とは
生物学の立場から、意識を分かりやすく表現すると「私たちヒトが起きているときに存在し、全身麻酔や、睡眠の際に失われるもの」となります。ただし、意識は必ずしも、全身麻酔や睡眠以外の状態、すなわち「覚醒」の状態に付属するわけでなく、例えば、レム睡眠中には意識がある。明晰夢は、その1例です。
(2)意識の発生
・いつ意識が生まれたのかという問題は、いつから動物が眠るようになったのかという問題と表裏一体です。進化の過程のどこかで、動物が運動性を獲得し、もしかするとそこで意識の原型が生まれたかもしれない。そして鶏が先か卵が先か、睡眠・覚醒という二つの状態が生じ、レム睡眠が発生して意識が発達した。
・もう1つの意識の発生は「全身麻酔からの回復」。動物がもっている「意識」は麻酔によって強く抑制される。そのようにして抑制された意識は、麻酔の濃度が下がると、しだいに回復する。
(3)睡眠とは
睡眠とは何か―それは起きている間に蓄積したものを解消する行為なのだろう。起きている間に蓄積していくもの、その実体はまだ完全に解明されていない。だが、起きている間に積み重なっていく借金は、どこかで返済しなければならない。蓄積すれば、脳や体の活動が損なわれる。
なぜ眠り、なぜ起きるのか?
新発見!脳をもたない生物ヒドラも眠る!
2025年11月6日 9:01 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「つくられる子どもの性差」森口佑介 著
「つくられる子どもの性差」
森口佑介 著 ISBN978-4-334-10474-0
親同士の会話で「女の子だとおしゃべりができていいな~。男の子はもう怪獣だから!」はよく聞くフレーズです。大人は無意識に子どもの性格の要因を性別に求めるが、それは正しい態度なのか。実際には活発な女の子も、おとなしい男の子もいます。本書は心理学・脳神経科学の膨大な先行研究をベースに、よく指摘される下記の性差についてデータで分析。「女脳」「男脳」は科学的根拠に乏しいこと、大人の思い込みこそが後天的に子どもの性差をつくったり増幅していることを明らかにしています。
1.指摘される6つの性差
(1)色の好みやおもちゃの好み
両者には性差があり、年齢とともに大きくなる。
(2)空間認知の性差
生後3か月時点でも心的回転能力の性差が認められますが、それは非常にわずかな差です。
(3)言葉の性差
語彙数や発話数などの性差は年齢とともになくなる一方で音韻の流暢性のような課題の成績では、大人になるまで性差は残り続けます。
(4)攻撃性の性差
幼児期ぐらいから攻撃性の性差が見られます。また、攻撃性の形態については、身体的攻撃や言語的攻撃に関しては男児のほうが高いが、関係性攻撃(無視や仲間外れ)に関してはほとんど性差がありません。
(5)学力の性差
国語においては女子のほうが成績が良く、数学においては男子がわずかに優れているものの、大きな性差はありません。
(6)感情の性差
感情の性差自体は調べることが難しいので、感情の表出しか調べられません。感情表出には性差があるとは言えません。
2.子どの未来のために
(1)子どもの性差はほとんどない
ほとんどの行動や能力に性差はありません。あるとしても、性差以外に重要な要因がある場合もありますし、それよりも個人差のほうが大きい。家庭環境や親子関係、もしくは生まれ持った特性などによる個人差の影響のほうがよほど重要です。
(2)大人にできる2つのこと
大人が変えるべき行動は、大きく2段階です。1つは、小さる性差を生み出している、子どたちへのかかわり方。もう1つは、その小さな性差を増幅するジェンダーステレオタイプです。従って、親の考える女性や男性についての思い込みを押し付けるのではなく、子ども自身の興味や才能をしっかりと観察し、それらを大切にする。子どもを一人の独立した人格を持つ人間として尊重すること。
「女脳」「男脳」は存在しない!!
女の子と男の子の「こころ」はほぼ一緒!!
2025年10月16日 9:07 カテゴリー:書籍紹介
