書籍紹介「脳と免疫の謎」毛内拡 著

「脳と免疫の謎」
毛内拡 著 ISBN978-4-14-088745-5

脳のメンテナンスを担当するグリア細胞は、脳の健康を維持するために損傷した細胞や異物の除去に貢献しています。しかし、過剰に活性化すると神経炎症を起こし、神経系の病態を誘発することが知られています。

I 脳の防衛システム
脳ほど丁重に守られている臓器はありません。防衛システムは「物理的な保護」「化学的な保護」「脳独自の免疫システム」「脳独自のリンパ排泄システム」の4つに集約できます。なお、ここでは、前2者を考察します。

1.物理的な保護
(1)非常に硬く、破壊されにくい頭蓋骨で保護されている。
(2)頭蓋骨の下の髄膜(硬膜、クモ膜、軟膜)という構造でも保護されている。

2.化学的な保護
(1)脳内に余分なものが入ってこないように「血液脳関門」というバリアがある。
(2)一方で、比較的小さい分子で脂溶性のアルコール、カフェイン、ニコチン、麻薬や危険ドラッグは通過する。
(3)様々な神経伝達物質はそれを受け取る受容体は「シーソー」の働きによって調整される。この「シーソー」のバランスが崩れると不調や依存症につながる可能性がある。

Ⅱ 脳独自の免疫システムとリンパ排泄システム
ここでは、残りの2者について考察します。

1.脳独自の免疫システム
(1)服の免疫システムはグリア細胞のミクログリアとアストロサイトが担っている。
(2)ミクログリアは、身体のマクロファージのように「貧食作用」を果たす。
(3)誕生後、多めにつくったシナプスを最適化する「刈り込み」が貧食作用によって、正常に行われないと自閉スペクトラム症などの神経発達症や統合失調症を発症すると考えられる。
(4)脳が免疫疾患、つまり炎症状態になると、ニューロンの軸索のミエリン鞘が消失し、中枢神経系では「多発性硬化症」、末梢神経系では「ギランバレー症候群」を発症する。
(5)ミクログリアは、何らかの理由で活性化状態が長引くと、炎症性物質を放出し続けうつ病などを発症する
(6)化学的な保護の「血液脳関門」はアストロサイトによって管理されている。

2.脳独自のリンパ排泄システム
(1)脳では脳脊髄液による脳リンパ排泄系と髄膜リンパ系によって脳内の老廃物を洗い排泄している。
(2)この排泄には、アストロサイトの突起部分に偏在する「アクアポリン4」と呼ばれる「水チャネル」(膜タンパク質)が通り道として機能する。
(3)排泄システムが作用しなくなると、老廃物が脳内に蓄積し、アルツハイマー病(アミロイドβの蓄積),パーキンソン病(αシヌクレインの蓄積)の原因となると考えられる。

「脳の免疫細胞」と言われるグリア細胞!
すべてを理解するカギは、「炎症」にあった!!

2026年4月2日 9:02  カテゴリー:書籍紹介

書籍紹介「ミトコンドリアから読み解く老化と再生」武本重毅 著

「ミトコンドリアから読み解く老化と再生」
武本重毅 著 ISBN978-4-8470-6235-3

赤血球を除く、ほぼすべての細胞の中でエネルギーを作っている工場のミトコンドリアは、食べた栄養素と吸い込んだ酸素を使って、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー通貨を作っています。従って、ミトコンドリアが不調になると、「老化」や「病気」が加速します。本書のテーマは、このミトコンドリアを活性化し再生することで、できるだけ老化を遅らせることになります。

1.老化を引き起こす3つの因子(ミトコンドリアは老化の司令塔)
老化の背景には「酸化」「炎症」「糖化」という3つの因子が関与しています。さらに、これらの因子は、それぞれ単独で体に悪影響を与えるだけでなく連鎖することでさらに老化を加速させます。
(1)酸化
ミトコンドリアによるATP産出過程では、数%の活性酸素が発生しますが、通常は体内の抗酸化酵素によって中和されます。しかし、加齢とともに中和機能が低下すると活性酸素種のヒドロキシルラジカルによって、細胞のみならずミトコンドリア自身やそのDNAもダメージを受けます。また、ミトコンドリア機能が低下すると活性酸素の発生量が増えたり、ミトコンドリアの自己修復や自滅作用(オートファージーやマイトファジー)も低下します。
(2)炎症
体が何らかの刺激に反応したり、ミトコンドリアが損傷すると、免疫システムが活性化し炎症反応が起きます。ところが、加齢によりこの反応が慢性化(慢性炎症)し、体に負担をかけます。
(3)糖化
ミトコンドリアが劣化すると糖を効率よくエネルギーに変換できなくなり、余分な糖がタンパク質と結合してAGEs(終末糖化産物)を作ります。すると、皮膚や血管、骨の弾力性が失われるなど組織が破壊します。

2.ミトコンドリアを元気にする「3本の矢」
老化は止められないが、以下の3本の矢によって、ミトコンドリアを活性化・再生化することで老化を遅らせることができます。
(1)第1の矢…NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
補酵素の前駆体のNMNは、体の中でエネルギーを作るために必要なNAD+(ナドプラ)成分を増やすもとになる物質です。NAD+は3大栄養素の代謝に不可欠な物質で増えると、ミトコンドリアの働きが活発になり、細胞の修復や老化のブレーキ役を担う「サーチュイン遺伝子」もよく働くようになります。
(2)第2の矢…水素ガス吸入療法
水素(H2)は活性酸素種の中で最も毒性が高いヒドロキシルラジカルを選択的に中和します。従って、酸化ストレスによる細胞損傷を防ぐだけでなく、ミコンドリア機能の維持に直結します。
(3)第3の矢…5-ALA(5-アミノレブリン酸)
5-ALAは、ミトコンドリア内の呼吸鎖(電子伝達系)の構成要素であるヘムの前駆体で、ATP産出効率が高まり、エネルギー不足による細胞機能の低下を防ぎます。

以上、要約すると
NMNがミトコンドリアのスイッチを入れ、5-ALAがその構造を育成し、水素がそれを保護する。

老化は、決して運命ではない!
「アンチエイジング3本の矢」でミトコンドリアを救う!!

2026年3月19日 9:07  カテゴリー:書籍紹介

書籍紹介「硬くて柔らかい「複雑系」骨のふしぎ」石井優 著

「硬くて柔らかい「複雑系」骨のふしぎ」
石井優 著 ISBN978-4-06-539850-0

骨は、一見、体を支える支持組織で硬くて不動なものと思われています。しかしながら、最先端の技術で観察することで以下のような驚くほど「動的」な姿が見えます。

1.骨の基本構造(実体は鉄筋コンクリート様)
(1)外側の硬い皮質骨(緻密骨)は重力に抗して体幹部を変えるために強度が保たれています。
(2)一方、内側にある網目状の海綿骨は"隙間"があることで、外部からの衝撃を緩和する役割を果たしています。
(3)骨の基本構造は、主にしなやかな骨組み(柱)をつくる膠原線維(Ⅰ型コラーゲン)と、その周りに蓄積されるリン酸カルシウム結晶(ハイドロキシアパタイト)からできていますが、パイプ椅子のパイプのように中は空いています。

2.破骨細胞と骨芽細胞による動的平衡
(1)骨を壊して吸収する破骨細胞は、マクロファージが特殊に変化して生じます。
(2)まず、マクロファージが血中から骨の表面に近づき、骨をつくる骨芽細胞とそれが分化し骨成分に埋もれた骨細胞から放出されるRANKL分子を受け取ることで、破骨細胞に分化します。
(3)一方、骨芽細胞の分化や機能は、破骨細胞由来の因子によって制御され、両細胞は、直接接触したり分子のやり取りによる非接触により、密接に連携しています。
(4)骨芽細胞は基質小胞という小さな袋状の構造物を骨に向けて放出します。
(5)その小胞の中には、コンクリート成分のリン酸カルシウムや鉄筋のコラーゲン、さらには骨化に必要な酵素群が含まれています。
(6)骨粗鬆病は通常の破骨細胞の作用で発症しますが、関節リウマチはそれとは起源も機能も大きく異なる別物("悪玉"破骨細胞)で発症することも判明しています。

3.免疫組織としての骨・骨髄
(1)骨髄は骨の中の空間に充填され、海綿骨の部分では骨と骨髄腔(硬い骨に囲まれた空間)が混じっています。
(2)骨髄腔には、造血幹細胞、間葉系のストロマ細胞さらに、骨髄腔を貫く類洞血管のネットワークがあります。
(3)造血幹細胞が生み出される血液系細胞は、大きく分けて、体中に酸素を運ぶ「赤血球」、血管の傷口をふさぐ「血小板」、さらに体の内外からの撹乱因子から身を守る「白血球」があります。
(4)なお、骨髄は造血機能のための唯一の場所ではなく最初は、胎児に栄養を与える「卵黄のう」が造血の場となっています。
(5)その後、発生が進み臓器ができると、造血幹細胞は「胎児肝臓」に移動し、さらに骨格系が出来ると、「骨髄腔」に移動し、ここで終生定住します。
(6)ストロマ細胞は骨髄腔に網目状に張り巡らされ「ハンモック」のようになっていて、血液系細胞はそこで増殖したり、別のハンモックへ移動します。
(7)なお、「骨芽細胞」と「脂肪細胞」はストロマ細胞から分化します。
(8)類洞血管はその他の血管と異なり、血管の壁に大きな隙間があり、血液系細胞は比較的自由に出入りしています。

4.がんと骨
(1)骨の中に存在する「がん」は、別の組織で発生したがんか骨にやってきて居つく「骨転移」タイプと、白血病のように造血幹細胞やそこから生じる血液系細胞ががん化するタイプがあります。
(2)がん細胞の代表的な免疫逃避機構の一つは、がん細胞の「PD-L1」という分子が免疫細胞のT細胞上の「PD-1」受容体に結合して免疫応答を抑制するケース。
(3)さらに、がん細胞が物理的に免疫の働かない場所である骨(骨髄)に逃避するケース(免疫特権)。
(4)この免疫特権は、骨髄腔のストロマ細胞が免疫抑制性のサイトカインを放出したり、免疫反応を抑制する「制御性T細胞」を引き寄せることで形成されます。
(5)また、がん細胞は増殖スペースを作るために、元々いる造血幹細胞を追い出したり、破骨細胞を活性化する物質(PTHrP)を分泌します。

最新研究でわかった。骨の新常識!!!

2026年3月5日 9:04  カテゴリー:書籍紹介

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