書籍紹介 「精神科医が狂気をつくる」 岩波 明 著
精神科医が狂気をつくる
岩波 明 著 ISBN978-4-10-470104-9
医療技術の進歩によって大きな恩恵をうけているにもかかわらず、医薬品や医療行為に関する一般の人たちの不信感は根強い。特にクスリに対する感情的な拒否感は、知的レベルの高い人たちにおいてもよくみられる。その原因の一部として、医者や製薬業界、あるいは役所は都合の悪い事実は隠すものだという確信に由来していると思われるが、確かにそういう傾向は否定できない。けれども、もっと重要な点は、はっきりした根拠のない「ナチュラル志向」だ。この点は「エコ」をしきりに訴える「市民運動」ともかなりの共通点をもっている。医療においても環境問題においても「身体に優しい」とか「環境に優しい」などという意味不明で気味の悪い言葉が疑問もなく唱えられている。
ところで、現在の精神科診療における治療法の基本は、他の診療科と同様に薬物療法です。そして、精神科においても、薬物療法の評判は必ずしもよくない。根拠のないクスリへの嫌悪感を示す人がいる一方、積極的に薬物療法を批判し、食事療法などの自然志向の代替療法を推奨する者が後を絶たない。
本書では、精神疾患に対する非薬物療法とその関連領域について、具体的な症例を元にして科学的な視点からそれらの「ウソ」を明らかにし、誤った治療法や妄想とも言える治療法によって取り返しのつかない不幸や精神疾患の重症化を生んでいる実態を述べている。
もちろん「医療」の枠の中にある治療法がすべて「セーフ」というわけではなく、数多くのウソは存在する。本書では、医療の名の下に行われている誤った治療法や考え方についても言及している。さらに精神疾患には、最新の治療を工夫しても治るものと治らないものがあるのも現実で、その現実にも十分に触れた上で、精神医療の現場について臨床例を中心に紹介している。
医療現場から医師たちの大罪を告発する渾身の著!!
2012年11月1日 8:32 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介 「よくわかる、こどもの医学」 金子光延 著
よくわかる、こどもの医学
金子光延 著 ISBN 4-08-720357-3
こどもの診察をしていて以前から感じることがありました。わたしの言っていることが、わたしの思ったように患者さんのご家族に伝わっていないことがある、ということです。診療でやはり一番重要なことは、患者さん側と医療側とで共通した理解があることだと思います。医療側はわかったつもりでいても、患者さん側にその内容についての理解がなければ話は通じません。
本書では小児科医として、親御さんたちに理解していただきたい知識、例えば、こどもの悪い熱の見分け方、悪い咳の見分け方、ひきつけ対処法から、インフルエンザの治し方や予防接種のガイドまで基本的な考え方の解説に重点をおき、日ごろ診察室でお話しているように、できるだけわかりやすい言葉で以下のように語られています。
(1)悪い熱の見分け方
熱だけならあまり心配する必要はなく緊急性もありません。しかし、けいれん、嘔吐、水分摂取不良、ぐったりしているといった症状がある場合は、早めの医療機関受診が必要です。
(2)悪い咳の見分け方
苦しそうでない咳ならば2~3日様子をみてみる。続くようならば小児科を受診する。もちろん悪化傾向があれば早めに。一方、咳のために眠れない、食欲がない、元気がない、咳で吐いてしまうようならば、熱の有無に関係なく小児科受診が必要です。
(3)ひきつけ対処法
まず、できるだけ落ち着いて、こどもを観察できるように少し広いスペースで横向きに寝かせ、首のまわりの衣服をゆるめて、状態を観察する。それでもひきつけが続けば救急車を呼ぶこと。仮にひきつけがとまっても小児科受診は必要です。
これら以外のテーマについてもそれぞれ平易に解説されています。そして、読後はきっとこどもの病気について考えかたが変わります。
2012年10月25日 9:41 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介 「男性不妊症」 石川智基 著
男性不妊症
石川智基 著 ISBN978-4-344-98212-3
不妊症に悩むカップルはおよそ8組に1組ですが、子供ができないイコール不妊といえば、女性側に原因があるという誤解が一般的にあります。不妊関係の著書は多くありますが、そのほとんどは女性側の不妊に対するものです。実際は原因の約半分が男性側にあたるにもかかわらず、男性側因子を度外視して治療されているケースが世界中で後を絶ちません。
男性不妊症の主な原因は、精液に精子のいない「無精子症」、精子の数が少ない「乏精子症」、運動精子が少ない「精子無力症」などの精子異常と勃起不全です。
著者は、精巣でどんなことが行われて、どんなふうに精子が造られているのだろうという純粋な学問的興味と、日常の診療の中で医師としてできることの限界を感じ、患者さんの強い思いに少しでも応えたい、役に立ちたいと、アメリカ、日本、オーストラリアと世界で最も生殖医療の盛んな国々で数多くの基礎研究、臨床研究、そして臨床に従事してきました。
本書には、日本のみならず世界をリードする男性不妊専門医の立場から男性不妊をとりまく日本の現状、また日本で診療しているだけでは知りえなかったこと、世界の常識と日本における常識の相違、最先端の生殖医療に関してできる限り多くの情報が盛り込まれています。また、精子が造られて受精するまで、そして最先端の男性不妊治療で可能なこと、不可能なこと、患者さんに知っていただきたい問題点、医師に対して聞きづらいであろうことなど、外来の限られた時間ではお話尽くせないこともまとめられています。
しかし、本書の最大の狙いは「不妊症は病気であり、そして正しい検査と治療によって子供を持てる可能性が見出せるのだ」ということを一般的に広く知ってもらうことにあります。
2012年10月18日 9:36 カテゴリー:書籍紹介
