書籍紹介「2030-2040年医療の真実」熊谷賴佳 著

「2030-2040年医療の真実」
熊谷賴佳 著 ISBN978-4-12-150844-7

高齢者医療を支えてきた中規模病院が、次々に破綻している。コロコロと変わる厚労省の政策に翻弄され、著者の病院も一時は破綻寸前まで追い込まれた。本書は医療の過酷な実態を明らかにし、この国の医療と介護をダメにした原因を指摘。あと5年で行き場のないお年寄りが街に溢れることになる。以下に示す5つの罪が絡み合って医療崩壊を加速させている。

1.民間企業の参入を阻む、かんじがらみの法律
(1)介護業界ではM&Aなどにより民間企業が参入し業界再編が進んでいる。
(2)一方、医療業界は医療法により、新たに株式会社による病院経営への参入とM&Aは阻止されている。
(3)さらに、医療法人の理事長は原則的に医師に限定されている。従って、経営ノウハウがない医師が理事長になっているケースが多い。

2.データも根拠もない医療政策
(1)医療データにもとづいた医療政策の推進が行われていない。
(2)新型コロナウイルス感染者を把握する保健所がファクスでやり取りし、IT化の遅れが話題になった。
(3)デジタル化が遅れているため、治療した結果や治療内容の良し悪しの判断ができない。

3.害のある投薬が野放しになっている
(1)今でも細菌性でない風邪に抗生物質が処方されている。特に60歳以上の医師の処方割合が非常に高い。
(2)無駄な治療薬や同じような薬が重複されても、それをチェックする監視システムがない(せいぜい薬剤師によるお薬手帳のチェック止まり)。

4.悪徳病院も優秀な病院も一緒くた
(1)2014年の診療報酬改定で新設された「地域包括ケア病棟」もデータに基づいて創設されていないので、急性期の病棟、回復期リハビリ病棟、療養病床の患者がどう違うのかよく判らない。
(2)大半の国民が、地域包括ケア病棟のある病院の存在そのものを知らない。
(3)電子カルテが導入されていても、規格が統一されていないので、各病院のやっていることが見えず、患者の状態を追跡できない。
(4)従って、悪徳病院も、患者の状態を改善して家や施設に戻している病院も一緒くたにされている。

5.開業医の診療報酬と出来高払い
(1)介護療養型病院を簡単に廃止し(2024年3月)、発言力の弱い集団は黙認し、発言力の強い開業医(日本医師会)に有利な診療報酬州は維持されている。
(2)外来診療は検査や薬を処方したらその金額を請求できる出来高払方式。
(3)従って、必要のない検査や投薬をしない良心的な医師より、それらを積極的にする医師のいる医療機関の収入が増える。

以上より、医療崩壊を防ぐ処方策は、前記の5つの崩壊要因を是正するとともに、急いで医療機関の集約化・チェーン化、遠隔ICUシステムや介護ロボットの活用を進めるべきである。

医療・介護業界は万年人手不足。一方で、必要とする人は確実に増える。
病院に入れない!施設も足りない!

2026年2月19日 9:05  カテゴリー:書籍紹介

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