書籍紹介「なぜヒトだけが幸せになれないのか」小林武彦 著
「なぜヒトだけが幸せになれないのか」
小林武彦 著 ISBN978-4-06-539089-4
本書では「生きていること」を生物が持つ「最大の価値」と捉え、その状態を「幸せ」=「死からの距離が保てている状態」と定義しています。この定義に当てはめて現状を考えると、ヒトの幸せを妨げている原因の一つは、私たちの細胞一つ一つに存在する「遺伝子」と言えます。
1.生物の生きるモチベーション
生存本能(生き残ろうとする意志)と生殖本能(子孫を残そうとする意志)が生きるモチベーションであり死からの距離を増大させる「幸せ」の原動力です。
(1)生存本能(個の「幸せ」)
誰からも教えれずに生きるための必須の行動で、進化の過程で獲得し「遺伝子」にプログラムとして刻まれています。
(2)生殖本能(種の「幸せ」)
個体にとっては、生きるのに必須ではありませんが、生殖本能がないと、種はそこで途絶えます。
2.なぜヒトは「幸せ」になれないのか?
(1)遺伝子と環境の不適合
私たちは、原始以前から作られた「遺伝子」のまま現代を生きています。従って、数千年の農耕牧畜を中心とした生活やもっと最近のテクノロジーによる近代化などは、遺伝子レベルでは全く変化をもたらしていません。最低でも数万年を要します。
(2)農耕の始まりによる定住化と格差の発生
「財産」という副産物により不安と孤独を生みだす格差が発生し今日まで続いています。そこで進化の過程で獲得したコミュニティを重視し、その中で生き残るように最適化された遺伝子との矛盾が発生しました。つまり、コミュニティが希薄(家族や個人重視)になり、全体に対する貢献などがあまり評価されなくなりました(利他的精神の空回り)。
(3)テクノロジーの爆発的・継続的発展
よりよい何かを作り出すところまでは遺伝子にプログラムされていますが、作り出したものの使い方までは遺伝子でフォローされていません。つまり、ヒトはテクノロジーの発展についていけなくなっています。
3.テクノロジーはヒトを「幸せ」にするのか?
幸福な未来の実現には二つの方法しかありません。一つは、自然回帰ですが、これは現実的には不可能です。もう一つは矛盾しているように聞こえますかテクノロジーの限定的活用です。
(1)危険度の高いテクロノジーの具体例
・戦争に使う殺戮兵器。これは死からの距離を直接的に最も縮めます。
・ゲノム編集など生命倫理に関わるテクロノジー。
・最も身近な最新テクノロジーのスマホ。スマホは近くの人との距離を遠ざけ、遠くのヒトとの距離を縮めさらに中毒になる可能性があります。
(2)AIの活用
高齢化が進む先進国では、日常生活においてもかなり有効な使い方ができます。特に、社会全体の死からの距離を広げる身体機能低下を助ける補助器具は期待されます。
幸せは「死からの距離感」で決まる!!!
2026年2月5日 9:09 カテゴリー:書籍紹介
