書籍紹介「100歳は世界をどう見ているか」権藤恭之 著
「100歳は世界をどう見ているか」
権藤恭之 著 ISBN978-4-591-18258-1
2050年には100歳以上の人が50万人を超えるといわれる日本。だが介護や孤独のイメージから「長生き」はネガティブにとらえられがちだ。本書は百寿者への調査、加齢をめぐるさまざまな研究成果を紹介、高齢期に高まるとされる「老年的超越」の謎に迫りつつ、まだ見ぬ人生への向き合い方を考える。
1.100歳の現実
(1)健康寿命
病気などで介護の支援を受けることなく、自立して生活できる期間は、男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)。平均寿命との差は男性が8.9年、女性は11.4年となっています。
(2)介護保険
介護サービスを受ける認定は、たとえば、自分で入浴はできるが風呂掃除はできない「要支援」と自立して生活ができない「要介護」があり、さらに程度により前者は1と2の段階に、後者は1~5の各段階に分かれ、それぞれ受けられるサービスと時間が異なります。
(3)自立度と敬老精神
・85歳以上では自立している人は6割近くいますが、100歳になると、自立度は約20%、軽度の介助が約26%、中等度の介助が約15%、寝たきり(全介助)が約38%です。
・日本は80歳の人が100歳になる確率は福祉の国とされるデンマークの2.5倍。両者の差はさまざまな理由が考えられますが、最も大きな理由は日本の敬老精神の高さが根本にあると思われます。
2.100歳の人は幸せか(「老年的超越」を手がかりに)
(1)「老年的超越」とは85歳以上などの高齢者に起こる心理状態でスウェーデンの社会学者、ラルス・トルンスタム教授が大規模調査の結果を跡まえて提唱(1989年)した概念です。
(2)「加齢に伴う、社会で求められてきた物質主義的で合理的な世界観から宇宙的、超越的、非合理的な世界観への転換」です。
(3)そして、最終的には年を取るとともに、「宇宙的意識」「自己意識」「社会との関係」の3つの領域に生じる変化を指摘しました。
(4)「宇宙的意識」の領域では、時空を超えて、最終的には宇宙という大きな存在につながっているという意識を持ち、生と死の区別も弱くなる。
(5)「自己意識」の領域では、傲慢さや自己中心的傾向が弱まり、利他性が高まる。
(6)「社会との関係」の領域では、過去の社会的な地位や役割にこだわらなくなり、対人関係でも限られた人との深いつながりを重視するようになる。
(7)100歳にもなると、身体機能や認知機能が大きく低下します。しかし、精神的な健康を保ち、「老年的超越」を高めて幸福度を高くすることは可能です。
(8)結局、「自分が安心できる場所で、あるがままを受け入れて生きる」ことか幸福につながると考えられます。
多くを失っても「幸せ」と言えるのはなぜ?
超高齢者の心の謎に迫る!!
2025年7月3日 9:03 カテゴリー:書籍紹介