書籍紹介「脳は眠りで大進化する」上田泰己 著
「脳は眠りで大進化する」
上田泰己 著 ISBN978-4-16-661454-7
ヒトの睡眠中は無意識下で何らかの生体活動が行われているようだが、詳細は見えない謎が多い活動であるという見解に留まっていました。しかし、著者らのグループによる細胞を透明化する技術、世代をまたがずに遺伝子を改変する技術、さらに寝息のパターンによる動物の睡眠を測定する技術などにより睡眠研究が急激な進歩を遂げている。
1.睡眠は覚醒量よりもアクティブ
(1)新しく刺激を受けた場所では、覚醒時に神経細胞同士がつながるシナプスが強くなり、それ以外のシナプスは切れる。一方、どんどん切れたシナプスは睡眠時に新たに作られたり、強くなっている。
(2)つまり、「睡眠は人間の成長、特に、脳の神経細胞の成長に必要不可欠な極めて大切な時間である」ということ。
2.体内時計が持っている三つの性質
(1)1日周期で振動する(約24時間で1回り)。
(2)光や温度といった外部環境でリセットされる。
(3)温度補償性がある(タンパク質に印をつけて性質を変えるリン酸化酵素の働き)
3.睡眠物質から覚醒物質へ(逆転の発想)
(1)睡眠物質の有無については結論はまだ完全に出ていない。ただ、それは体が緊急事態(病気など)に直面して体を休めるべき場合に分泌される。
(2)ふだんの睡眠には必ずしも必要ないようである。
(3)眠っている時には、神経細胞はしばらく発火して一休み、しばらく発火して一休み…のリズムを繰り返す。
(4)つまり、神経細胞が非常に活性化した活動状態でなければ眠れないとふう一面がある。
(5)具体的には、神経細胞の発火が続くと陽イオンのカルシウムが細胞内に入り、神経細胞を活性化し発火が続く。
(6)一方で、入ってきたカルシウムは細胞内の陽イオンのカリウムを細胞外に流出させるチャネル(穴)を活性化し、カリウムが流出する。
(7)すると、細胞はなだめられて、神経細胞の発火が小休止する。
(8)神経細胞が小休止すると、カルシウムの細胞内への流入は止まる。
(9)次に細胞内で多くなったカルシウムはカルシウムを排出するポンプが細胞外へ流出する。
(10)そこで、カルシウムによって踏まれていた神経細胞のブレーキかはずれ、また神経細胞が発火を始める(睡眠中はこれらのプロセスを繰り返す)。
ヒトは睡眠で、日々「新しい自分」に生まれ変わっている!!
2025年5月1日 9:01 カテゴリー:書籍紹介