不妊症の原因は配偶子(精子と卵子)の形成から受精そして着床に至る全てのプロセスにあります。糖鎖はこれらのプロセスにおいて重要な役割を果たしています。例えば、受精の段階では、精子と卵子それぞれの表面にある糖鎖がピッタリ一致して、始めて卵黄膜(透明体)を突破し卵子と結合して受精が完成します。
タンパク質に結合すべき糖鎖が結合しないと、タンパク質の機能が失われ、神経系中心に知能や運動神経の発達が遅れ、ひどい場合は歩行困難となります。また、タンパク質と糖鎖の結合が不充分ですと、悪性貧血、若年でも関節や皮膚に異常が発現する早老症になります。
喘息の人(特にお子様)は気管支の粘膜が薄いか、過敏に反応しますので細菌やダニなどの影響が高くなります。結果、好酸球やT細胞(免疫細胞)が反応し咳で異物を外に出そうとします。そこで、糖鎖は粘膜をしっかりさせる働きや好酸球やT細胞の反応をコントロールします。
膵臓β細胞の糖鎖は常時変化する体内のグルコース濃度を感知して、インスリンの分泌をコントロールしています。また、分泌されたインスリンが各細胞表面の糖鎖に接着する事によりエネルギー源としてのグルコースが各細胞に取り込まれます。
多発性関節炎を主症状とし、その他に全身の臓器に広く炎症が発現する関節リウマチ患者のIgG糖鎖にはガラクトースが欠損しています。その原因としてIgG(抗体)を生産するB細胞に係わる糖転移酵素の減少(異常)が考えられています。
アルツハイマー病(AD)の脳内に蓄積されるアミロイドβタンパク質(Aβ)はその前駆体タンパク質」の生理的代謝物で、健常者の脳では蓄積されず、脳内で分解されるか脳外へ排出されます。AD脳では蓄積されたAβが神経細胞や血管壁を障害しますが、Aβの誘導やその蓄積に糖鎖が重要な役割を果たしていると考えられます。
同じ様に生活をしていても、癌になる人と、ならない人がいます。癌になっても初期レベルで進行しない人、進行して末期癌になる人がいます。また、癌になっても、人によって発症部位が異なります。癌の根本原因については諸説(ex.食事、タバコなど)ありますが、生活習慣の乱れによる精神的・肉体的ストレスが主因と思われます。それでは、どの部位に発症するかを考えますと多分、身体で最も疲弊した、弱い部位に発症すると考えるのが自然です。この様に考えますと、ほとんどの癌での免疫細胞との関係や、進行プロセス、転移プロセスは以下の様に共通していると考えられます。
癌は誰でも日々体内で3,000個~5,000個位発生しますが、通常は免疫細胞(NK細胞、キラーT細胞など)によって攻撃され処理されます。ところが、精神的・肉体的ストレス等が長期にわたり積み重なると、免疫細胞の手に負えなくなり癌細胞が日々増殖して発癌に至ります。
発癌に伴って、正常細胞で本来発現するはずの複雑で多様な糖鎖が癌細胞によって障害され、単純な構造の糖鎖が多くなる「糖鎖不全現象」が発生します。一方、癌が進行しますと、正常細胞では発現しない特定の糖鎖が発現する「糖鎖の新規発現誘導」がなされます。
癌細胞が血中に入る血行性転移は、
(1)癌細胞の原発巣からの離脱
(2)癌細胞の血管内皮細胞との接着
(3)転移先臓器における癌細胞の血管外への移動
のプロセスによって発現します。糖鎖はこれ等全てのプロセスにおいて重要な働きをしています。
例えば、グルタミン結合糖鎖をもっている糖ペプチドは通常の生理活性ペプチドに比べて血圧降下作用が安定することが確認されています。
脂質異常症に限らず、いわゆる生活習慣病(高血圧、糖尿病など)患者の血液糖タンパク質には健常人に比べて著しく糖鎖構造が変化している糖タンパク質が見つかります。血漿糖タンパク質の多くを合成する肝臓の細胞膜タンパク質でも同様の糖鎖構造の変化がある事が原因の一つと考えられます。